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皮膚から見た動物の進化 [皮膚腺でつないだ命の連鎖]

このアポクリン腺は、当然のことながら、最初から新生児の栄養物の分泌用として形成された器官ではないのです。アポクリン腺分泌物の本来の目的は、皮膚と毛を守ることであり、より具体的にいえば、皮膚の乾燥化と毛の劣化を防ぐことです。

だから、脂質や多糖体に富んだ粘調な天然ワックスとして分泌し、それで皮膚表面や毛を覆う必要があったのです。

地球の生命体は、海で生まれ海で進化し、淡水に進出した魚類から両生類が進化しました。やがて3億5000万年前(デボン紀)に、ペデルペスという両生類の祖先が、地上に最初に足を踏み入れた脊椎動物となるのですが、彼らが直面した最大の問題は、陸地という未知の世界に特有の、乾燥した大気だったのです。
両生類は淡水に生息していたのですが、そこでは浸透圧差から、つねに細胞内に入り込もうとする水に対する対策が必要でした。しかし陸上では、こんどは逆に表皮から大気中に逃げ出そぅとする水をいかに留めるか、皮膚からの水の蒸発をいかに阻止するかが大問題となったのです。

水棲と陸棲では正反対の対策が必要になったということです。

初期の両生類は、この皮膚からの水分蒸発を防げなかったため、おそらく水辺から離れることができなかったはずです。ちなみに、現生の両生類であるカエルは、オタマジャクシ時代は水中生活のため、皮膚は粘膜であり、成長してカエルに変態すると、皮膚は角質が覆う角化上皮に変化し、陸上で生活ができるようになります。

とはいっても、カエルの角質は、気体や水分が通過できるほど薄く(このため両生類は、脊椎動物では例外的に皮膚呼吸できる動物である)、乾燥状態での生存は困難です。

次に登場した爬虫類は、大きく2つの系統に分かれます1一つは、皮膚腺がほとんどない皮膚を持つ竜弓類(恐竜、現生のワニ、トカゲ、カメ、ヘビなど)、もう1つは、皮膚腺が分布する皮膚を持つ単弓類であり、後者が私たちほ乳類直接の祖先となったのです。

竜弓類は、小さなセグメントに分かれた厚い角質層で作られている「鱗」を発達させました。この麟は、外力から身を守る鎧であると同時に、強力な乾燥防御システムになりました。それがいかに有効であるかは、現生のへどやトカゲの一部が、極めて乾燥した地域を生息環境としていることが証明してます。

だが、強靭な鎧であるため、体が成長するにつれて古い鎧を脱ぎ捨てる必要が生じ、ヘビやトカゲでは、体が大きくなるたびに、脱皮という複雑なシステム(表皮細胞の成熟と脱落の精妙なコントロールが必要である)が必要になったのです。
そして同時に、脱皮直後は外敵に対し極めて脆弱になってしまったのです。

一方の単弓類から分岐・進化した獣弓類では、皮膚腺を有する皮膚が全身を覆っていて、これは間違いなく単弓類から受け継いだものでしょう。すなわち、皮膚最外層(角質) をつねに新しいものと置き換えることで劣化を防ぎ、さらに、皮膚を粘調な皮膚腺分泌物で覆う方式だ。さらに獣弓類から分岐・進化した晴乳形類では、皮膚表面を密集した毛が覆うようになります。これは体温を維持するための優れた断熱材であると同時に、外力に対する防御器官にもなりました。

ちなみに、もっとも初期の体毛は、単弓類の腹部の一部に出現したと考えられていて、これは孵化前の卵(単弓類の卵は水分透過性を持つ薄い卵殻に包まれていた)に水分を与えるための器官だったという説があります。そしてその後、毛は全身に広がり、保温のための器官へと役割を変化させたようです。

現在のほ乳類は、哺乳形類から「皮膚・皮膚腺・体毛」をワンセットで受け継いでいます。

その皮膚は、ワニやトカゲほど文夫ではないが、柔軟でしなやかであり、このしなやかさなしでは、子宮内で胎児を大きく育てることは不可能だったと思われます。

備忘録


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